海外の大学で学ぶ留学生にとって、ネットワーク環境を一つに固定するのは現実的ではありません。中国の動画サービス、銀行アプリ、決済サービスは中国国内向けの接続を必要とする一方、大学の学習管理システム、Google Workspace、研究データベース、現地の行政サイトは滞在国の回線から直接アクセスしたほうが安定する場合があります。ClashやMihomoを使えば、すべての通信を同じノードへ送るのではなく、アプリやドメインごとに中国向け、現地向け、通常のプロキシ向けに振り分けることができます。この記事では、留学生が中国の動画・銀行アプリを快適に使うためのClash設定、ノードの選び方、寮のWi-Fiで接続できない場合の確認手順を、実用的な構成にまとめます。
留学生に適した通信の分け方
最初に理解しておきたいのは、Clashは「速いノードを一つ選んですべての通信に使う」ためだけのツールではないということです。中国のサービスを利用する場合は中国本土または香港・台湾など、サービスの所在地やアカウント条件に合った出口を選びます。一方、大学のポータル、授業動画、現地の銀行、キャンパス内のプリンターやNASなどは、直接接続のほうがログイン確認や地域判定で問題が起きにくくなります。
| 通信の種類 | 推奨ルート | 理由 |
|---|---|---|
| 中国の動画・音楽サービス | 中国向けノード | 地域判定、配信品質、アカウント認証を安定させやすい |
| 中国の銀行・決済アプリ | 原則として直接、必要時のみ指定ノード | 不自然なIP変更や海外IPによるリスク判定を避ける |
| 大学ポータル・学習管理システム | DIRECTまたは現地回線 | 学内認証、SSO、キャンパスIP制限と相性がよい |
| 一般的な海外サイト | 自動選択したプロキシ | 現在のネットワークで到達しにくいサイトを補助する |
| プリンター・学内サーバー・LAN機器 | DIRECT | ローカルアドレスをプロキシへ送る必要がない |
銀行アプリについては、動画サービスと同じルールをそのまま適用するのはおすすめできません。銀行や決済事業者は、ログイン地域、端末情報、IPアドレス、SIMカード、位置情報などを組み合わせて不正利用を判定します。Clashで接続先を頻繁に変えると、正しい利用者であっても追加認証や一時的な制限が発生することがあります。まずは公式アプリの案内と銀行の海外利用ポリシーを確認し、必要な場合だけ同じ地域の固定ノードを使うようにしてください。
ノードとプロキシグループを設計する
ノードは数が多ければよいわけではありません。留学生の利用では、用途別に少なくとも「中国向け」「海外プロキシ」「バックアップ」の3グループを作ると管理しやすくなります。中国向けグループでは、動画の再生元や銀行サービスの対応地域に近いノードを優先します。海外プロキシグループは、大学の研究サイトや一般的な海外サービスに使い、バックアップグループには異なる地域または異なる回線のノードを入れます。
自動選択では、テストURLだけでなく実際の用途も考慮してください。軽い204応答が速いノードでも、長時間の動画再生、画像の多いサイト、WebSocketを使うアプリでは不安定なことがあります。中国動画用グループでは、短時間のレイテンシだけでなく、再生開始までの時間、画質の維持、数分後の速度低下も確認しましょう。
proxy-groups: - name: China-Services type: url-test proxies: - cn-node-01 - cn-node-02 - hk-node-01 url: https://www.gstatic.com/generate_204 interval: 300 tolerance: 80 - name: Study-Proxy type: select proxies: - Auto-Overseas - DIRECT - name: Main type: select proxies: - DIRECT - China-Services - Study-Proxy
url-testはレイテンシの低いノードを自動的に選択しますが、銀行アプリのように接続元の一貫性が重要な通信では、selectで固定ノードを手動選択するほうが安全です。ノードを切り替えた後は、アプリを完全に終了して再起動し、古い接続やDNSキャッシュが残っていない状態で動作を確認します。Clash VergeやClash Verge Revではプロキシグループ画面から選択でき、Mihomoのダッシュボードを利用する場合は現在のグループと実際に使用されたノードを接続一覧で確認できます。
アプリとドメインごとのルールを作る
Clashのルールは上から順番に評価され、最初に一致したルールが適用されます。そのため、広いルールを先に置くと、後ろに書いた細かい指定が実行されません。たとえば最後に書くことが多いMATCH,Mainを途中に置くと、すべての通信がそこで処理されてしまいます。中国向けサービス、大学関連、ローカルネットワーク、広告や不要な通信、最後の既定ルートという順番で整理すると、原因を追いやすくなります。
ドメイン名はサービスの公式ヘルプや接続ログから確認してください。大手サービスでも、ログイン、画像、動画CDN、プッシュ通知、決済確認に別々のドメインを使うことがあります。一つのドメインだけを登録して「アプリが開くが動画が再生されない」「ログインはできるが通知が届かない」という状態になった場合は、ダッシュボードの接続履歴で関連ドメインを調べ、必要な範囲だけ追加します。
rules: # 中国の動画・音楽サービス。実際の利用サービスに合わせて見直す - DOMAIN-SUFFIX,iqiyi.com,China-Services - DOMAIN-SUFFIX,youku.com,China-Services - DOMAIN-SUFFIX,bilibili.com,China-Services # 大学や現地サービスは直接接続を優先 - DOMAIN-SUFFIX,university.edu,DIRECT - DOMAIN-SUFFIX,edu,DIRECT # ローカルネットワーク - DOMAIN-SUFFIX,local,DIRECT - IP-CIDR,192.168.0.0/16,DIRECT,no-resolve - IP-CIDR,10.0.0.0/8,DIRECT,no-resolve # 最後の既定ルート - MATCH,Main
銀行アプリは、最初から広いDOMAIN-SUFFIXを大量に追加するより、公式ドメインを一つずつ確認する方法が適切です。金融関連の通信をすべて中国向けノードへ送ると、本人確認画面だけでなく、端末登録やプッシュ基盤まで同じ経路になり、かえって不安定になる場合があります。アプリがClashのルールに従わないときは、通常のシステムプロキシではなくTUNモードが必要なことがあります。ただしTUNはDNS、IPv6、ローカルネットワークにも影響するため、変更前に現在の設定をバックアップしてください。
寮のWi-Fiでつながらない場合の診断
寮や大学のWi-Fiでは、自宅回線と異なる制限が存在します。ポータルサイトで利用規約に同意しないと外部通信が許可されない、UDPが制限される、DNSを指定サーバーへ強制リダイレクトする、特定ポートだけを通す、といった構成がよくあります。Clashが起動しているのにすべてのサイトが開かない場合は、まずプロキシ設定を疑う前に、Clashを停止して通常のブラウザでログインページや学内ポータルが表示されるか確認してください。
- Wi-Fiに接続し、ブラウザで任意のHTTPサイトまたは大学のポータルを開いて利用規約画面を完了します。
- Clashの接続ログで、テストURLの接続が成功しているか、DNSエラーやタイムアウトが出ていないか確認します。
- ノードを変更して同じテストを行い、すべてのノードが失敗するのか、特定ノードだけが失敗するのかを分けます。
- UDPベースのノードが失敗する場合は、TCP/TLSベースのノードを試します。寮のネットワークがUDPを制限している可能性があります。
- IPv6を有効にしている場合は、IPv4でのみ接続できる環境との相性を確認します。DNS設定とTUN設定を同時に変更しないことが重要です。
- 設定を再読み込みし、既存の接続を閉じてからアプリを再起動します。古い経路が残っていると、修正後も失敗しているように見えることがあります。
寮の認証ページは、プロキシを有効にしたままだと表示されないことがあります。その場合は一時的にDIRECTへ切り替えて認証を完了し、その後にClashを有効化します。また、学内のプリンターや共有フォルダーへアクセスする場合は、TUNモードの「自動ルート」や「LAN接続を許可」の設定を確認してください。必要以上にallow-lanを有効にして外部から管理画面へ公開するのは危険です。外部コントローラーは原則として127.0.0.1にバインドし、強いシークレットを設定してください。
DNSと安全性を整える
動画サービスだけ一部が再生できない、銀行アプリのログイン画面で止まる、ルールは正しいのに違う地域のページへ移動する、といった場合はDNSも確認します。Mihomoではfake-ipがドメインベースのルールと相性がよく、プロキシ対象をドメイン名で判定しやすくなります。ただし、ローカル機器、ゲーム、STUNを使う通話アプリなどは実IPを必要とする場合があるため、fake-ip-filterで除外します。
dns: enable: true enhanced-mode: fake-ip fake-ip-range: 198.18.0.1/16 fake-ip-filter: - '*.lan' - '*.local' - '+.stun.*.*' - 'localhost.ptlogin2.qq.com' nameserver: - https://1.1.1.1/dns-query - https://dns.google/dns-query
設定ファイルを外部から入手する場合は、配布元、更新日時、ルールの内容を必ず確認してください。購読URLにはプロキシ情報だけでなく、DNS設定、外部コントローラー、スクリプト、危険なリダイレクトが含まれる可能性があります。使わない設定項目を削除し、個人情報や秘密鍵をコメントに残さないことも大切です。Clash Verge、Clash for Windows、ClashX、Clash for Android、Mihomoでは画面の名称や対応機能が異なるため、同じYAMLを無条件に共有せず、各クライアントのコアバージョンに合わせて検証してください。
よくある質問
中国の動画だけ遅いのはなぜですか?
ノードの地域がサービスの配信元と合っていない、動画CDNだけ別ドメインになっている、またはノードが混雑している可能性があります。接続ログで動画ドメインを確認し、複数の中国向けノードで再生開始時間と数分後の速度を比較してください。
銀行アプリはプロキシを使うべきですか?
一律にプロキシへ送るのではなく、銀行の海外利用案内を優先してください。直接接続で正常に利用できるならそのままにし、接続元地域が必要な場合も固定ノードを選び、頻繁な切り替えや不明なノードの利用は避けます。
大学のサイトが開かなくなりました。どうすればよいですか?
大学ドメインをDIRECTにするルールを、中国向けの広いルールより上に置きます。SSOや認証基盤が別ドメインの場合は接続ログで確認し、関連ドメインも同じ扱いにします。学内Wi-Fiでは、先にポータル認証を完了してください。
寮のWi-Fiではどのノードを選ぶべきですか?
UDPが制限されている場合があるため、まずTCP/TLSベースのノードを試します。複数のノードがすべて失敗するなら、ノードの問題ではなく認証、DNS、ポート制限、または大学側のネットワークポリシーを確認してください。
Clashの設定は、すべての通信を強制的にプロキシへ送るよりも、用途を分けて必要最小限のルールを作るほうが安定します。中国の動画は専用グループ、大学サービスは直接接続、銀行アプリは公式ポリシーを確認したうえで固定経路、そして寮のWi-Fiでは認証とTCP接続を先に確認する、という順番で整えるとトラブルの切り分けが容易です。設定を変更する際は一度に多くの項目を変えず、接続ログで結果を確認しながら、自分の授業環境と生活サービスに合った構成へ少しずつ調整してください。
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