オンラインゲームでは、回線速度の数値だけで快適さは決まりません。SteamやPS5で重要なのは、ゲームサーバーまでの往復遅延、パケットロス、経路の安定性、NATの状態です。動画やWebサイトは問題なく表示できるのに、試合中だけラグが発生する、マッチングに失敗する、ボイスチャットが途切れるといった症状は、ゲーム通信に適さない経路が選ばれているサインかもしれません。
ClashまたはMihomoを正しく設定すると、ゲーム関連の通信だけを専用のプロキシグループへ振り分け、アップデートや一般的な国内サービスは直接接続にできます。ただし、プロキシを使えば必ずpingが下がるわけではありません。この記事では、SteamとPS5を想定し、ノード選び、ルール設計、DNS、UDP、TUNモード、NATまで、実際のプレイ環境で確認すべきポイントを順番に解説します。
ゲームの遅延を構成する要素
ゲームで表示されるpingは、単純なインターネット速度とは異なる指標です。クライアントからゲームサーバーへデータを送り、応答が戻るまでの時間を表すため、回線の混雑だけでなく経路の距離や中継ノードの品質にも左右されます。特にFPSや格闘ゲームでは、平均値よりも一時的な遅延の跳ね上がり、いわゆるジッターが操作感に大きく影響します。
| 症状 | 主な原因 | 最初に確認する項目 |
|---|---|---|
| 常にpingが高い | サーバーまでの距離、経路の遠回り | ゲーム地域とノード所在地 |
| 数秒ごとにラグが出る | Wi-Fi干渉、混雑、パケットロス | 有線接続とロス率 |
| マッチングに失敗する | UDP、NAT、地域判定の不一致 | UDP転送とNATタイプ |
| ログインはできるが試合に入れない | ゲームサーバーと認証サーバーの経路差 | 接続ログとルール順序 |
| ボイスチャットだけ不安定 | 音声サービスのUDP通信 | UDP対応とDNS解決 |
まず、ゲーム内のネットワーク統計を有効にしてください。Steamのゲームによっては、フレーム時間、ping、パケットロス、サーバー地域を表示できます。PS5ではゲーム内表示や接続診断を利用し、Clashの設定変更前後で同じゲーム、同じ地域、同じ時間帯に比較することが大切です。条件を変えたまま測定すると、設定の効果とサーバー側の混雑を区別できません。
ゲーマー向けノードの選び方
ノードの選択では、ダッシュボードに表示されるテスト遅延だけを見ないでください。一般的なHTTPテストURLへのpingが低くても、実際のゲームサーバーへ向かう経路が良いとは限りません。ゲームサーバーの地域に近いノード、ISPとの接続が安定しているノード、UDPを正しく転送できるノードを優先します。
- ゲーム地域に近い場所:日本のサーバーで遊ぶなら、まず日本国内または近隣地域のノードを比較します。遠い地域を経由すると、暗号化処理と距離の両方で遅延が増えます。
- UDP対応:ゲーム本体、ボイスチャット、サービスディスカバリはUDPを使うことがあります。ノード設定に
udp: trueがあるか確認してください。 - 混雑しにくいノード:平均pingが同じなら、ピーク時間の変動が少ないノードを選びます。5分間の数値が安定している方が、瞬間的に最速のノードより実戦向きです。
- 過度な多段接続を避ける:
relayや複数の中継を重ねると出口を変更できますが、ゲームでは遅延と障害点が増えます。
url-testはノードの自動選択に便利ですが、テスト先がゲームサーバーと異なるため、完全な最適解ではありません。ゲーム用グループでは、まず自分で候補を2〜4個に絞り、実際の試合で比較する方法が安全です。頻繁な自動切り替えは、プレイ中のセッションを不安定にする可能性があるため、toleranceを適切に設定してください。
Steam通信を目的別に振り分ける
Steamは一つのドメインだけで動作しているわけではありません。アカウント認証、ストア、ゲーム配信、フレンド機能、ゲーム本体の通信が別々のサービスを利用するため、すべてを一律にプロキシへ送ると、ダウンロード速度が低下したり、地域判定が不自然になったりします。
ゲームの通信だけをプロキシしたい場合は、ゲームタイトル固有のドメインやゲームサーバーのIP範囲を把握する必要があります。公開ルールセットを使う場合も、内容と更新頻度を確認し、ルールが大きすぎる場合は必要なサービスだけを手動で追加します。特にDOMAIN-KEYWORD,steamのような広すぎるルールは、Steam全体を同じ経路へ送るため、意図しないトラフィックまで巻き込むことがあります。
proxy-groups: - name: Game type: select proxies: - JP-Game-01 - JP-Game-02 - DIRECT rules: # 実際の利用サービスに合わせてドメインを追加する - DOMAIN-SUFFIX,steamcontent.com,Game - DOMAIN-SUFFIX,steamstatic.com,Game - DOMAIN-SUFFIX,steampowered.com,Game # ローカル機器と一般通信は直接接続 - GEOIP,LAN,DIRECT - MATCH,DIRECT
この例はあくまで出発点です。Steamのダウンロードサーバーをプロキシ経由にすると、かえって速度が落ちる場合があります。ゲームのログイン、ストア、アップデート、試合中の通信を同じグループにまとめるのではなく、必要に応じて「ゲーム本体」「配信」「認証」の3種類に分けると、原因を切り分けやすくなります。
MATCH,DIRECTを書いたり、広いIP-CIDRルールをゲーム用ドメインより前に置いたりすると、後続のゲームルールが実行されません。設定変更後はダッシュボードの接続一覧で、実際に適用されたルールを確認してください。PS5ではルーター側のClashが基本
PS5にClashクライアントを直接インストールする一般的な方法はありません。そのため、PS5の通信をClashで制御するには、Mihomoを動かしているルーター、ホームサーバー、または同じLAN上のゲートウェイを経由させます。PS5のネットワーク設定で、Clashを動かす機器をデフォルトゲートウェイまたは透過プロキシの経路にするのが基本です。
- ClashまたはMihomoをルーター、Linuxサーバー、対応するネットワーク機器へインストールします。
- LAN内でDNS、TUN、または透過プロキシ機能を有効にします。
- PS5が正しいゲートウェイとDNSを受け取っていることを確認します。
- PS5の接続テストでNATタイプ、ダウンロード速度、アップロード速度を記録します。
- ゲームを起動し、Clashの接続一覧にゲーム関連の通信が表示されるか確認します。
PS5のトラフィックをすべてプロキシする構成は簡単に見えますが、実際には注意が必要です。PlayStation Networkの認証、ストア、ゲームサーバー、音声通信は異なる接続方式を利用します。すべてを同じノードへ送ると、NATタイプが悪化したり、フレンド検索やボイスチャットが動作しなくなったりすることがあります。まずはDIRECTで正常動作を確認し、その後に必要な通信だけを段階的にプロキシしてください。
UDP、DNS、NATを同時に確認する
ゲームのトラブルでは、TCP通信だけが通っている状態を「Clashは正常」と誤認しがちです。WebページやSteamのログインが成功しても、ゲーム本体が使うUDP通信が遮断されていれば、マッチングやボイスチャットは失敗します。ノード側、Clash側、ルーター側の3か所でUDP転送が有効になっているか確認してください。
DNSも重要です。ゲームの地域サーバーやCDNは、DNSの応答によって接続先が変わることがあります。プロキシ対象のドメインをローカルDNSで解決すると、Clashのルールと実際の経路が一致しない場合があります。Mihomoではfake-ipが便利ですが、LAN機器、PS5の検出、STUNなどは実IPを必要とするため、fake-ip-filterに適切な例外を追加します。
dns: enable: true enhanced-mode: fake-ip fake-ip-range: 198.18.0.1/16 fake-ip-filter: - '*.lan' - '*.local' - '+.stun.*.*' - '+.stun.*.*.*' - 'time.*.com' nameserver: - 1.1.1.1 - 8.8.8.8 tun: enable: true stack: mixed auto-route: true strict-route: true dns-hijack: - any:53
ただし、設定項目名や対応範囲はClash Verge、Clash Verge Rev、Mihomo、ルーターの実装によって異なります。設定をそのまま貼り付けるのではなく、使用しているコアが対応しているか確認してください。TUNを有効にした後にLAN機器へアクセスできなくなった場合は、LANの除外ルール、ルーターの管理アドレス、DHCP設定を見直します。
変更後の測定とトラブル切り分け
遅延改善を判断するときは、速度テストの結果だけで結論を出さないようにします。ゲームでは、短時間の最高速度よりも、プレイ中の安定性が重要です。次の順番で一つずつ条件を変えると、問題の場所を特定しやすくなります。
- Clashを使わずに確認:PS5またはSteamを通常の回線で接続し、ping、NAT、パケットロスを記録します。
- DIRECTで確認:Clashを経由させつつ、ゲーム通信を直接接続にします。これで改善するなら、プロキシノードやプロキシ経路が原因の可能性があります。
- 近いノードを比較:同じゲーム地域に近いノードを2〜4個選び、同じ時間帯に試合を行います。
- UDPを確認:TCPは正常でもUDPだけ失敗していないか、ダッシュボードとゲーム内の表示を照合します。
- DNSを切り替えて比較:fake-ipとredir-hostを一時的に比較し、ログイン、マッチング、ボイスチャットへの影響を確認します。
マッチング失敗が続く場合は、ノードを変更する前にルールログを見ます。認証ドメインだけがプロキシされ、ゲームサーバーが直接接続になっている、またはその逆という状態は珍しくありません。また、ゲーム地域を変更するとサーバー候補やNAT条件が変わるため、Clashの設定だけでなくゲーム内の地域設定も固定してください。
実戦向けの推奨設定手順
最初から複雑なルールを作る必要はありません。ゲーム用の設定は、動作確認をしながら小さく始める方が安全です。まずLAN、PS5のシステム通信、SteamのログインをDIRECTで正常に動かし、次にゲーム本体のドメインだけを専用グループへ追加します。その後、必要であれば音声通信やマッチメイキング関連のドメインを追加してください。
ノードは「最も近い」「UDP対応」「ピーク時間に安定」という3条件で選び、5分間のテスト値だけで決めないようにします。ゲーム中に接続が切れる場合は、url-testの切り替え間隔を長くするか、手動選択グループへ変更します。設定を保存する前に、YAMLのインデント、グループ名、ルールの順序、ノード名の一致も確認してください。
SteamとPS5の遅延改善では、プロキシを追加することよりも、不要な通信をプロキシしないことの方が効果的な場合があります。直接接続とプロキシ接続を同じ条件で比較し、ゲーム内のpingだけでなくパケットロス、NAT、マッチング成功率、ボイスチャットの安定性まで確認すれば、自分の回線に合ったClash構成を見つけやすくなります。準備ができたら、対応クライアントを導入して小さなルールから試してみてください。
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